舞台「金閣寺」 劇場情報2011/07/20 20:00

神奈川芸術劇場 金閣寺 参照

 日本文学の限りない可能性にチャレンジする。
 神奈川から世界へ向け、日本オリジナルの世界基準の舞台作品 その第一弾は三島由紀夫の「金閣寺」に決定!


 今を生きる私たちのあらたな舞台芸術のクリエーションのテーマとして、私たちは「日本」に焦点をあてました。その第一弾といたしまして、日本文学の金字塔である三島由紀夫の『金閣寺』の舞台化に挑みます。
 小説『金閣寺』は世界各国の言語に翻訳され、その文学世界は不動の存在となっております。そして、この『金閣寺』は何度か映画化が試みられております。その中のひとつとして1958年に巨匠市川菎監督に『炎上』というタイトルで発表されました。本作品は名優市川雷蔵(当時26歳)の初の現代劇出演ということも話題になりました。これは日本映画史における重要な作品のひとつとして、日本映画の代表として、いまなお世界中の人々に愛され続けています。

あなたにとっての「美」は何ですか?

 この小説は昭和二十五年七月二日に起こった金閣寺放火事件が素材となっています。三島由紀夫は、この事件を詳細に調べた上で、質の高い観念小説に昇華させました。主人公溝口がなぜ自分自身が「この世で最も美しいもの」として、信仰に近いまでの憧憬の念を抱いていたものに火を放ってしまったのか、そして戦中戦後という急速に変貌した環境と人々の価値観の変換の流れに取り残され、吃音という身体的なハンディキャップを抱えた主人公が、「生きていく」ための拠り所としていた「美」というもの。主人公溝口にとっての「金閣寺」は私たちそれぞれがその形、あるいは言葉を変えて心の奥底にあるものかもしれません。誰もが世俗的価値観から、隔ててくれる崇高なものを欲するならば、溝口にとってそれは、金閣寺だったのです。
 三島が描き出した、放火という犯罪を犯すまでに至るその心理描写は実にスリリングで且つ、内的表現として優れたものです。主人公を単なる犯罪者にせず、世間、社会の中で生きる繊細な男の葛藤を実に巧みに描いています。絶対に犯してはならない行為まで至らせてしまう彼にとっての「美」とは。そして、私たちの「美」とは何なのか。この世界の中で生きていくために必要なこととは。舞台版「金閣寺」は人間の魂の本質に深く迫ります。

スタッフ・キャスト
原作/三島由紀夫 原作翻案/セルジュ・ラモット 台本/伊藤ちひろ 
演出/宮本亜門
出演/森田剛、高岡蒼甫、大東俊介、中越典子、高橋長英、岡本麗、花王おさむ、大駱駝艦〈田村一行、湯山大一郎、若羽幸平、橋本まつり、小田直哉、加藤貴宏〉、岡田あがさ、三輪ひとみ、山川冬樹、瑳川哲朗

翻訳/常田景子 音楽/福岡ユタカ 振付/小野寺修二 美術/ボリス・クドゥルチカ 衣裳/前田文子 照明/沢田祐二 音響/山本浩一 映像デザイン/掛川康典 映像プラン/栗山聡之 ヘアメイク/川端富生 舞台監督/藤崎遊


上演時間:約3時間(休憩1回含む)