舞台「浮標」 感想2012/10/20 15:00

りゅーとぴあ 10列18番

 当日は大千秋楽だったため、ライブビューイングが全国の映画館であった。上演の最初に長塚さんが「上演時間が長いので、上演回数が少ない作品です。リラックスしてご覧ください。」と挨拶した。
 舞台は、初演と全くセリフを変えず戯曲どおり。舞台装置も、砂を盛った四角のエリアの外に椅子を置き傍観者が入れ替わり立ち代り座るところも初演と同じ。違ったのは役者さん。赤堀さんやのぶえさんが加わり、さらに役者の味が増していて良かった。声を聞いて、あの若者は木村了くん?と思ったら当たりでした。
 田中さんは、だんだんと妻が死に近づくことによって感情を壊していくから、後半は叫んでいるように台詞を言うことが多かった。パンフレットを見ると敢えてそういう風に演じたらしい。松雪さんは藤谷さんよりも段々に弱っていくところや、五郎の行く末を案じる心が強く見て取れた。さらに、赤堀さんは金貸しが仕事だから、取立ても必須。そこに手持ちのお金を貸してしまう人の良さというかが人として溢れていて良かった。のぶえさんは、ああこの声だぁと嬉しくなる存在。思うことをそのまま口に出してしまう人柄がよく出ていた。やはり良い役者さん。観れて良かったけれど、結構辛かった。心身ともに元気じゃないと、こういう演劇は心が辛い。
 逃げようのない現実と、それでも生きるということを表現したかった作家三好さんとそれに感動した長塚さんを思った。
 ビューイングに6台のカメラが設置されていたらしいけど、全く分からなかった。