舞台「おのれナポレオン」 感想2013/05/11 14:00

東京芸術劇場 プレイハウス

 出演者である天海祐希さんが体調不良で降板。代わりに宮沢りえちゃんが出ることになった。通常のちの舞台は中止が多い中、代役を立てて対応したのは日本の演劇の中でも異例だと思う。
 短期間での「一部公演中止」「ライブビューの中止」の連絡も早く、しかも丁寧で、スタッフワークのすばらしさも話題になった。
 三谷作品の映画はピンとこないことが多いが、この舞台は文句なしに面白かった!野田さんのナポレオン、大好き!

以下!ネタバレします。一度観たきりの舞台なので間違いもあるはす、防備録なので悪しからず。

まず、配役と特徴
野田秀樹:ナポレオン・ボナパルト
宮沢りえ:アルヴィーヌ・モントロン(シャルルの妻だったが、ナポレオンと恋におちる)
山本耕史:シャルル・モントロン(副官、ナポレオンの随行員としてセントヘレナ島へ同行するが思惑あり)
浅利陽介:マルシャン(従僕、ナポレオンに大変忠実、彼からも信頼されていた)
今井朋彦:アントンマルキ(医者、セントヘレナ島へ随行した)
内野聖陽:ハドソン・ロウ(セントヘレナ総督、英国を愛し国益になることを判断基準とする)

パリ、医者アントンマルキの部屋、中央の椅子に腰掛けて、ナポレオンが毒殺されたのではないかと疑う来訪者ビクトール(セントヘレナ出身の医学生)の質問に答えている。来訪者はいるものとして演技。
「ヒ素による毒殺をお疑いですか?医学生?ああ、どおりで症状にcお詳しい。あ、コーヒーをどうぞ。…」しばし会話した後、 ナポレオンの恋人アルヴィーヌを尋ねるように案内する。
アルヴィーヌ「ええ!頂いたお金で小さな店(安酒場)を…。ワインをどうぞ。あの人を一番愛していたのは私ですわ。あなた、シャルルのところへは?まだ?あの人が一番ナポレオンの財産を貰ったのよ!彼を訪ねてみるといいわ。」
シャルル:「私を疑っている?陛下の葬式に出席しなかったから?この暮らしぶりでどうやって葬儀に出る旅費の工面ができると言うんですか。博打がやめられなくてね。もらった金もあっという間になくなりましたよ。いま?ジゴロですよ。女に食わせてもらっています。ワインをどうぞ。あの男のところへは行きましたか?ハドソン・ロウ(内野)。陛下はあの男を忌み嫌っておられた。」
【注】ナポレオンの遺骸は死亡後約20年してフランスに戻った。葬式とはその20年後の時のこと。
軍人ハドソン・ロウ(内野):「いやぁ、よくいらっしゃいました。」とても老けた灰色のモコモコしたローブをまとった彼が手を揉みながら出てきた。「この屋敷に人が来ることは滅多にありませんで、あなたがいらっしゃる前はかれこれ…、あ、コーヒーをどうぞ。 私は、ナポレオンの監視役を終え英国へ戻ってきたら、さぞ讃えられると思っていました。しかし、戻ってみたら、その早すぎる死に疑問を持たれ侮蔑の反応。地位も名誉も失いました。」(椅子を床にダンっと打ち付け場面はセントヘレナ島、内野さんはローブを脱いで軍服へ)

シャルル「陛下は今いらっしゃいません。」
ハドソン「挨拶に来ると言っておいたのに」
アルヴィーヌ下手奥から登場「陛下は今お風呂に入っていらっしゃいます。すぐにいらっしゃいます。」3人一列に並び彼を待つ。
ナポレオン下手客席通路から登場「いそげぇ、マルシャン! 潮が満ちるぞぉ!」そのまま三人を無視して舞台奥の扉へはける。マルシャンも続く。
アルヴィーヌ「あの…、陛下は潮干狩りに行ってしまわれました。何というか…、とても気まぐれな方で…。」
ハドソン「では、ご挨拶はまたの機会に。」
シャルル「総督、ここでの食事はあまりに粗末な気がするのですが。」
ハドソン「週に一度のパーティーをお止めになればいいのです」
シャルル「我々にも付き合いというものがありましてね。」
ハドソン「ならば、お持ちのものを売ればよろしい。」
シャルル、面白くなさそうに退場
ハドソン一人語り「彼らは自分たちの持ち物を島の人間に売った。しかし、彼らの希望する高値でなど買う者はいなかった。必然、それらは二束三文で売られた。銀食器は、紋章を削ってまでして……クククッ!彼は自由に過ごし過ぎていた。私は彼の夕方の散歩を禁止し、隣家と行き来できないように柵を作った。」
ナポレオンが入ってくる
ナポレオン「柵がぁ、柵を撤去してくれ。」
ハドソン「出来ません」
ナポレオン「飛ぶ鳥が囲われているようだ」
ハドソン「そうです。あなたは、捕虜なんです。もう少し自覚を持っていただきたい。あなたを監視するために島を2700人の兵士が取り囲み、600門の大砲、10隻の軍艦が配置されているんです。年間415000ポンドもの費用が費やされているのです。」 ナポレオン「んあ?今のところをもう一度!年間415000ポンドが予のために使われている!だいたい私はぁ、英国の船に投降しただけで、捕虜ではない。」
ハドソン「私はあなたを捕虜として扱わせていただく。」
二人の会話は物別れに終わる

舞台奥からアルヴィーヌ本を手に登場、マルシャンは下手から アルヴィーヌ「陛下の一日はこんなふうでした。
朝六時起床。大体はそのままベッドに横になっておられ、七時にベルで従僕を呼ぶ。マルシャンは、その音で陛下のご機嫌が分かったと言います。」と、アルヴィーヌが話す脇でナポレオンとマルシャンは身振り手振りで実演
アルヴィーヌ「着替え、ジョギング、お風呂、朝食。陛下のお食事は大変早く10分程で終わっていました。どうしてそんなに早く済んでしまうのか見ていましたが、どうやらあまり噛んではいらっしゃらないようでした。その後体力づくり(ナポレオン腹筋する)
陛下の伝記の制作(ナポレオンが口述するのをマルシャンが書き留める)、体力づくり(また腹筋)、夜八時夕食、体力づくり(また腹筋、なかなか次へいかずナポレオンひいふう言いながら腹筋)、お風呂、そして就寝。とまぁ、こんなふうでした。変化を嫌う方だったのでほぼ毎日この繰り返しでした。」
アントンマルキとハドソン総督がいる
アントンマルキ「陛下はチェスがとてもお強い。私どもの中では陛下にかなうものなどおりません。総督も中々のものと聞いております。いかがでしょう、陛下の呼び方をチェスで決めるというのはいかがですか?
あなたが勝てば"ボナパルト将軍"、陛下か勝てばあなたも"陛下"とお呼びするというのは。」
チェス対決場面、二人の他にナポレオンのそばにアルヴィーヌ、シャルル、アントンマルキ(全て舞台上手)
マルシャンはお盆に飲み物を載せて下手
ハドソンが熟考してコマを動かすと間をおかずナポレオンがコマを動かす。よって始終ハドソンが考えているようになる。
アントンマルキ「総督、お考えになる時間が長過ぎます」
ナポレオン「シャルル、お前ならここはどう動かす?」
シャルル、ナポレオンに耳打ちする。
ナポレオン嬉しそうに自分のコマもハドソンのコマも解説しながら1人で動かし始め、「ほら、ここでちぇっくめいとだ!」(ハドソンの負け)
アントンマルキ「さぁ! これからは総督も"陛下"と呼んでいただくことになりますね」
ハドソン「いいや!これは反則だ!さっきあなたはワーテルローの話をしながら持っていたコマを使わず、別のコマを使った。これはタッチアンドムーブ(一度手にしたコマは使わなくてはならない。)に反する」
ナポレオン「総督、これが実践でなかったことに感謝するんですな。戦争には反則も何もない」
日にち変わって
アルヴィーヌがシャルルに「早くして、急がないと陛下がジョギングから戻ってきてしまう!いい?台詞は入っているわね?」
シャルル「お前に言われたくないなぁ」
そこへ、ナポレオンが戻ってくる。
ナポレオン「今日はモリエールの町人貴族をやってくれるんだろう?」
アルヴィーヌ「えっ、ええ。でも、練習がまだ……」
ナポレオン「そんな、1日や2日でできる人なんていないんだからぁ、今やって。」
シャルル町人貴族の一部を思いっきり棒読み。
ナポレオン「え?なに?途中から?全然わからないんだけど1幕一場からじゃないの?」
シャルル「5幕?場です。陛下が面白いところからでいいと…」
ナポレオン「えっ、僕が言ったの?」
シャルル「はい。」と言ってその時のナポレオンの台詞を言っていると途中から本人が同じセリフを言い出し、
ナポレオン「あ、言ったかもしれなぁい。じゃあ、ピアノ、ピアノは弾けるか?」
アルヴィーヌ「はい。」
ナポレオン「じゃ、あれにしよう。ベートーベンの交響曲第3番。あいつが私のために書いた曲。」
アルヴィーヌ「でも、ベートーベンはお嫌いでは…」
ナポレオン「よい!人を憎んで曲を憎まずだ。私のために書いた曲をあとで曲名を変えたりしているが、許す。」 (曲名ナポレオンン→英雄)
アルヴィーヌ「弾けません。」
ナポレオン「じゃ、何が弾ける」
アルヴィーヌ「月光なら…」といってピアノを引き始める
ナポレオン「んぁ!なんかさそのフレーズの繰り返し、もっと短くならないのか」
アルヴィーヌ「でも、作曲はこのように…」
ナポレオン「もういい。踊ろう。」
二人踊りだし、ナポレオン走っている時を止めたように片足を膝立て、もう一方は伸ばした状態でアルヴィーヌを抱きとめる。その態勢でいい雰囲気になった矢先、考えが別のところに飛びブツブツつぶやき出す。
アルヴィーヌ「陛下!集中してください!」
ナポレオン、どうでも良くなって彼女を落とす。
シャルル「もともと、数々の浮名を流した彼女にナポレオンを誘えといったのは私だ。だが、彼女が本気になったのは誤算だった」
場面変わって、舞台奥の扉からナポレオンが苦しそうに出てくる。
ナポレオン「何かぁ、お腹痛いし、頭痛と耳鳴りが…」
アントンマルキ「ヒ素中毒の症状ですね。」
アントンマルキ、ナポレオンの様子が悪いので、ハドソン総督に相談する。
アントンマルキ「誰かにヒ素を盛られているような気がするんです。ナポレオンから全幅の信頼を受けていた料理長が今朝死亡しました。彼が付き合っていた女性も同じ症状でした。2人は一本のワインを飲んでいました。ワインにはヒ素が盛られていたんです。」
アントンマルキ「1つ気になっていることがあるんです。ここに置いてある「毒薬取扱説明書」は、一体誰が置いたんでしょう?」
2人はまず、アルヴィーヌのもとへ。
アルヴィーヌ「あの人がフランスからきた、ここから脱出を図る手紙を読んでいるのを見たの」
フランスへ戻ったら、たくさんの女がいるわ。帰ってほしくなかった。だから、ここにあった本を読んでヒ素を盛ったの。」
ハドソン「それは本当にフランスからの手紙?手紙は全て私が目を通している。そんな手紙はなかった。」
アルヴィーヌ「でも私見たわ。」
2人はシャルルのもとへ
シャルル「陛下は若かりし頃、僕の家庭教師をしてくれたことがあるんだ。(ナポレオン、当時の再現)何を言っているのかさっぱりわからなかったけど、軍人に憧れを抱くには十分だった。僕は17で入隊し、陛下にお会いした時ご挨拶したんだ。お久しぶりですと。」
ナポレオン「え〜、誰だっけ?」
アントンマルキ、ハドソン「え〜!聞いてないよー。」
シャルル「聞かれなかったから。その時はとても落胆した。しばらくしてアルヴィーヌと結婚することになったのでご報告に行ったんだ。彼女の浮名を知っていて反対するものもいたんだけどど。」
ナポレオン「家臣の結婚は、予が全て決めているのに勝手に結婚してしまったのか。顔も見たくない。追放だ。」
シャルル「僕は呪ったよ。陛下もアルヴィーヌに目をつけていたらしいんだ。」
アントンマルキ、ハドソン「え〜!聞いてないよー。」
シャルル「だから聞かれなかったから。」
シャルル「ある日、ナポレオンが幽閉されることを新聞で知って」 「アルヴィーヌ、陛下に会いに行こう!」
シャルル「今、彼の周りには人なんかいないはず。随行すれば 奴の遺産を狙える。」
アルヴィーヌ「何を言っているの!私達、追放されたのよ。」
シャルル、ナポレオンに向かって「陛下!私は陛下の忠実なるしもべ、どこまでもご一緒させてください。」
ナポレオン「こんなに忠実なる家臣がまだ予の周りに残っていたとは…」
シャルル「最初は遺産狙いだったが、だんだんフランスに帰りたくなってね。手紙?私が書いてあたかもフランスからのように見せたんだ。そしてアルヴィーヌと二人で…」
ナポレオンを真ん中にしてシャルルとアルヴィーヌがはさみ、首を絞める。ナポレオン力なく倒れる。
シャルル「しかし、六年間のトレーニングで陛下の身体は強靭なものに変わっていた!」
ナポレオン起き上がり「あれ〜!今、なんか首のあたりに、あれ〜!」
この首締めもう一回するがだめ。次にシャルルが鈍器を持ってナポレオンを殴る。一旦倒れるが、再び復活。もう一度首締めたが、失敗。
ナポレオンの「あれ〜!」にシャルル「ほんとに覚えていないのかよっ!」
で、先生に「毒素を吐き出させたほうがいいんじゃないか。」と言ったんだ。先生は何かというと??を処方するって有名だったからね。」
シャルル「先生、??を」
アントンマルキ「しかし、陛下はあんな飲みにくいものとおっしゃっておられた。」
シャルル「では、レモネードに混ぜて。」
ナポレオン「薬、薬をくれぇ」
シャルル、ナポレオンが手を伸ばすと遠ざける。ナポレオン「貴様が欲しいのはこれだろう!」と遺産分割について書かれた遺言状を投げる。
シャルル中を確認しレモネードを渡す「一度は諦めた遺産だったが目の前に現れればやはり嬉しい。」
ナポレオン、薬を飲むと痙攣し死亡。
先生が死亡を確認。
ハドソン「では、蓄積されたヒ素と??薬の複合で死亡したと…。死因は胃癌だ。解剖はするがね。先生、よろしく頼む。」(毒殺だと英国の監視体制を疑われるため)
20年後のハドソンへ
「そう言えば、マルシャンの所へは行かれましたか。今はだいぶ羽振りがいいようで」
マルシャン、舞台奥の扉から入ってくる。
「お待たせしました。陛下の推薦状のおかげで会計検査院に入ることができまして。さ、カフェオレをどうぞ。温かいうちに。遺骸の保存状態が良いのはヒ素のせいだと?ああ、動物の剥製にも使いますからね。」
知らぬ間に訪ね歩いた5人が並んでいる。奥にはナポレオンがチェス盤を前に座っている。
マルシャン「こういう人が出てくることを陛下は予測されていました。どうですか?気分は?飲まれたでしょう?飲み物を。残ったヒ素を皆で分けて持っていたのです、この時のために。」
マルシャン「(遺体の始末)後は、私が。ありごとうございました。これは陛下から今回のことのお礼です。どうせ皆ろくな人生を送っていないだろうからと。陛下は宗教上の理由から自殺するわけにはいかなかった。毒殺も許さない。あくまでも病死という結論を導かなくてはならなかったのです。毒薬の本をあそこに置いたのは私です。後は、ネズミ捕りを近くにおいておくだけで良かった。」
マルシャン、おれいをさしだす。
シャルル「遠慮なく」といって退場。アルヴィーヌ「私も」退場。ハドソンは中々お礼を受け取らない。
マルシャン「陛下はあなたのような総督が派遣されたことを神に感謝しておられました。あなたは、決して毒殺だと言わない方だと見ておられました。」
ハドソン「神に…感謝?」お金を受け取りやぶこうとするが出来ず「わしがあそこでの生活で誇れることがひとつある。彼とチェスをしたことだ。陛下、万歳!」退場

舞台「あかいくらやみ」 感想2013/05/11 18:00

@シアターコクーン

 事前に戯曲をさっと読んでおいたので、何とかついていけたが、この観客に理解を求めないつくりは長塚さんらしいなと思った。
 憎悪は残るかもしれないけれど、今生きているそのことこそ最も大切なものって書きたかったのかな。  小栗くんは、とっても良かった。久しぶりに舞台の上の彼をいいなと思った。背が高くて、顔が小さくて、身体のバランスが突出して格好良かった。声よし、姿よしのいい役者さんでした。