「RE」ほか 土田英生さんインタビュー2012/06/19 17:41

@ぴあ全文引用

MONOの新作公演から始まり、リーディングドラマ『Re:』、演劇集団 円への書き下ろし、〈土田英生セレクション〉の第2弾……と留まることなく駆け抜ける2012年。自分の劇団もビッグプロジェクトも、淡々とこなすイメージのあるクリエイター、土田英生はいったいどのようにそれぞれの作品に挑んでいるのだろうか?

――MONOの久しぶりの新作『少しはみ出て殴られた』のプレスリリースで土田さんは「何を書きたいのか迷っていた」と明かしていましたね。

「これまでの劇作家生活で、テレビも含めるとおそらく100本以上は書いてきました。若い頃は“次はこれを書こう、その次はあれを”と続々テーマが沸いてくるんですが、この歳になるとそれも一巡してしまう。ふっと思いついたものも、“前あの芝居で書いたな”とか、どうしても以前書いたモチーフと似たものになってくるんです。それをどうするのか、自分のモチベーションをどう保つのか、難しくなってきてはいた。外部の方から頼まれるプロデュース公演は“こういうものを書いてほしい”という要望があるから、それをとっかかりに書いていくことができる。でも、劇団の作品はいちばん自由にできる分、純粋に一から作り上げなくてはいけない。今回の『少しはみ出て殴られた』は、久々に書きたいという思いが強くあったので形にできました」

――その強い思いはどうやって生まれたんですか?

「ちょっと前から、非常にみんなが殺伐としているなと感じていたんです。震災があって、その雰囲気がより濃厚になった。インターネット上でも断定的な意見を言う人が目立ったり、政治についても政策以前に立場だけで批判するような、感情が先走った意見が目に入るようになって。なんでこんなにみんな、対話する余裕がなくなったんだろう?って思っていた。もちろん芝居は啓蒙するためのものではない、単なるエンタテインメントなので、観て楽しんでもらえればいいんです。ただ、芝居でできることってなんだろうと考えた時、政治や社会の仕組みを云々する前に、やっぱり人の業に目を向けたい、興奮に水をかけたいと思ったんです。そんな大層な話ではなく、“冷静になろうよ”ぐらいのことなんですけど」

――客演として岡嶋秀昭さんと、ヨーロッパ企画の諏訪雅さん、中川晴樹さんの3人が入ったことで、これまでのMONOとはちょっと違った空気が感じられました。

「人の好みってあんまり変わらないんですよね。僕はMONOのメンバーが好きだし彼らと作品を作り続けていきたいけれど、それだとやる前から結果が見えてしまう。だからこそ新しい風を入れたいという思いがありました。どの団体でもそうだと思うんですけど、出てきはじめの時期ってめちゃくちゃ楽しい。MONOは比較的オーソドックスな芝居をやる劇団ですけど、それでも最初の頃は僕らが一番新しいんだっていう自負がありました。そこからだいぶ歴史を重ねていますから、若い世代のいいところを盗みたいっていう狙いもあります。ヨーロッパ企画ってすごく面白いけれど、僕自身の好みからすると少しユルすぎるかなって思う部分もある。でも、翻ってMONOを見てみると、カッチリしすぎじゃない? ユルい方がいいんじゃないの? という気持ちになる」

――そこであえてそのユルさを取り入れてみようと?

「そうです。今までだと客演の人もMONOに合わせてもらうように演出していたんです。でも、今回のダメ出しではヨーロッパメンバーには“ヨーロッパの公演よりはカッチリやってくれ”と話し、MONOのメンバーには“ヨーロッパのふたりに引きずられてほしい”と伝えました。もうひとりの客演の岡島君は派手な芝居をする人だから、岡島君には“流れさえ押さえていてくれれば、あとは好きにやってほしい”と頼んだ。そうすることによってMONOっぽさを残しつつも、その間から生まれてくるようなもの、今までなかったものができないかと思ったんです。今回の稽古はやってて楽しかったです」

――MONOの公演が終わると、4月には演劇集団 円への書きおろし『胸の谷間に蟻』の公演がありますね。

「女性3人が主役の作品なので、わりと単純におっぱいを連想しました。僕おっぱいが好きだから、一回ぐらいそれを軸に書いてみようかなって(笑)。下着メーカーの三姉妹の話です」

――続けて5月には『燕のいる駅』の公演が控えています。この〈土田英生セレクション〉は過去の作品をキャストを変えて再演するシリーズで、今回は1997年発表作を自ら脚本に手を入れてリメイクするそうですね。初演の時と変更するポイントはどこにあるんでしょうか?

「最初は不自然なところだけを直そうというぐらいの気持ちだったんです。でも、この作品で描いた“世界が静かに終わっていく時間”という設定が、いまやわりと現実味を帯びるようになってしまった。稽古は再来月には始まりますが、正直僕の中で迷いはあります。あんまり現実に寄り添うのもおかしい。でももはや絵空事では済まされない。いまの自分の感覚を信じて、引っかかる部分を直していくしかないですね。初演は20代が中心の若いかわいい芝居だったから、それを大人の芝居に変えるという作業もあります」

――この作品に関してはキャスティングにもかなり関わっているとか。

「〈土田英生セレクション〉では、ほぼ自分がやってみたい人に声をかけさせていただいてます。ポイントとしては、パスが回せる人。MONOの演出の時、僕は“シュートは打つな、パス回しの芝居をしてほしい”ってよく伝えるんです。だからMONOのメンバーはパス回しがすごくうまいけど、シュート力に欠ける(笑)。外部公演では華のある人に出てほしいという思いはあるけれど、パスが苦手な人と芝居をするのはしんどいから、シュート力もありながらパスも回してみたいっていう人を集めたつもりです。中島ひろ子さんは、映画『桜の園』の頃から大ファンなんですが、初舞台なんですよ」

――〈土田英生セレクション〉は、自由に作れるMONOと、メジャーなキャストでやるプロデュース公演のちょうど間のような存在ですね。

「やったことをないことがやりたい、欲求不満になっているところを埋めたいというのはあります。MONOでしかできないこと、プロデュース公演でしか満たせないもの。その間にこの土田英生セレクションがある」

――もうひとつ、3月に古田新太さん×宮沢りえさん、生瀬勝久さん×仲間由紀恵さんらによるリーディングドラマ『Re:』も控えていますね。ちょっとひるみそうなほどの豪華キャストですが……。

「そりゃビビりますけど、やることを普通にやるしかないなって思っています。僕、まだ全然世の中に知られていない頃にやった外部の仕事がいきなりSMAPの草彅剛くんによるリーディング『椿姫』でしたから。しかも同じ年に初の連続ドラマ(『柳沢教授の優雅な生活』)の脚本も経験した。正直、初の連ドラの時はそのすごさがわからなくて、プロデューサーに“書きたいやつはいっぱいいるんだからもっと自覚持て!”って怒られたぐらい」

――その経験があるからでしょうか、土田さんは臆せずにどんな規模の仕事にもチャレンジする人という印象が強いです。

「『椿姫』稽古初日、取材陣もずらっと並んでいるなか、プロデューサーから“ここからは公開稽古ですから、作・演出の土田さんどうぞ”とマイクを渡された時のことは今でも忘れられないですよ。“あのー、えーと”って声が裏返っちゃった。でもそうなったらしゃべるしかない。その経験で自分がちょっとずつ強くなる。もちろんまずは自分の心地いいことをやるべきだと思います。でも心地いいことだけをやっているとどんどん小さくなっていく気がするんです。絶対無理なことはやっちゃだめですけど、時々ちょっと無理なところに自分を置く。そりゃ緊張もするしうろたえるけれど、それを乗り越えたら、そのレベルの仕事はクリアできるようになるじゃないですか」

――狂言のようなまったく異なるジャンルの作品を手がけるのも「無理なところに自分を置く」一環ですね。

「もちろん狂言だって、最初に話が来たときは言葉遣いも能舞台のルールもまったく知りませんでした。でも頼んでくれてるってことは、先方は僕ができると思ってるわけだから、全然無理なわけではないはずなんです。そこで『狂言ハンドブック』という本を買ってきて、能舞台の構造をいちから勉強して書いてみたら、正しいかどうかはわからないけれど一応書けた。この間2作目の狂言を書いたんです。その時はもう“次どんな狂言にするー”って話できるぐらいにはなってる(笑)。僕自身、ミーハーでおめでたいタイプってこともあるんでしょうね。話が来た時に“わ、あり得ないな”と一瞬思っても、“こんなのがきた、ワーイワーイ”って受けてしまう」

――いま、若い世代に「もっと売れよう、大きな仕事をしよう」という意志の強い作家が減っている印象があります。そんななかで果敢にチャレンジしていく土田さんの姿は観る側からしても頼もしいです。ペンギンプルペイルパイルズの倉持裕さんに話を聞いた時も「自分は大きな作品をめざしたい」という話がありました。

「劇団も大事にしながら外部の仕事の積極的にやるという姿勢は、倉持君と共通するところがあると思います。最近の若い子は……って、こんなことを言う大人にはなりたくないけれど、確かにちょっと欲が希薄だなって感じることがある。大きな作品に関わりたいとか、自分で動いて作品つくろうとか、そういう気持ちを持っている人はいないことはないですけど、絶対数が少ない気がするんです。たとえば単純に女の子に対する気持ちも薄い。飲みの席に魅力的な女の子がいたら、僕だったら男全員が狙ってるって考えるし、負けないように全力でしゃべりかける。でも今の若い男の子たちは同じ土俵に乗ろうともしないで、一緒になって笑っていたりするんですよね。欲望は大事だと思うんです。女性にモテたい、よく見られたいという思いって活動の原動力ですよ。タイプは違えど、倉持君だって僕と一緒でスケベだと思う(笑)」

――今年は例年にも増してかなり盛りだくさんですが、テレビドラマの脚本は最近ご無沙汰ですね。

「テレビからは2年ぐらい離れてたんで、またやりたいなと思ってます」

――劇作家の方がドラマの脚本を書く機会はかなり増えたように思いますが、宮藤官九郎さんのようにドラマの常連にまでなっている方はまだまだ少ないのが現状です。その中で土田さんはかなり多くのドラマを手がけていらっしゃるので、今後にも期待が募ります。

「まだお会いしたことはないんですが、宮藤官九郎さんは天才だと思います。一度TBSの廊下ですれ違いそうになったんですが、“あ、噂のクドカンだ!”と緊張して隠れちゃった(笑)。僕、テレビ局行くの大好きなんです。小劇場あがりの悲しさか、なんか出世した気がしちゃうんですよね。テレビ局のドラマ制作部に行くと、昔関わったスタッフの方がえらくなってたりするんです。“おお、土田君!”なんて声かけられると嬉しくてしょうがない。用事終わってもしばらく帰らなかったりします(笑)。以前組ませていただいたプロデューサーが別の部署を経て最近またドラマ班に戻ってきたんです。僕、一緒に飲んだその日にシノプシスを送りました」

――芝居もたくさんありますし、これからの土田さんの活動が楽しみです。

「まだありますよ。秋には演劇を始めたばかりの子たちと小さな芝居をやろうと企画してます。他には映画撮ることとか、考えなくもないですけど、やっぱり芝居を打つというこの営みが好きなんですよね。あ、海外での公演はぜひやりたいです。韓国で『悔しい女』を上演したらけっこううまくいったので」

――土田さんの書かれる作品は、初演の時は「このキャストがぴったり」と思うのに、各所で再演されるたびに新たな面白さが見つかるところが魅力のひとつですね。

「世間から注目されたような記憶は一回もないから、僕自身ブレイクしたことはないって自覚はしてるんです。でもわりと上演はいろんなところでずっとしてもらってるのはありがたいことですね。下北沢を歩いてるとたまに“あ、おれの芝居やってる”ってことありますもん」

――脚本に力があるんだと思います。今伺っただけでも盛りだくさんですが、長期的な野望を教えてください。

「長生きしたい。年齢的にではなくて、“あの人、昔面白かったよね”って言われるのは絶対にイヤなんです。別役実さんみたいにずっと現役でいたい。そのためにもいろんな仕事を手がけたいんです。もうひとつ、関西の演劇界を元気にしたいと思ってます。一時、地方からたくさん劇団が出てきて盛り上がった時期がありました。昔ならば関西である程度もまれて東京公演を打つことができた劇団は、必ずしばらくは東京でも人気を獲得できた。関西が東京に刺激を与える存在だったんです。でも最近また少し元気がない。京都を拠点としていた劇団も少しずつ東京に行ってしまっている。だからこそ僕は京都にこだわって続けていきたい。"京都"って大きく胸に書く感じで頑張ります(笑)」

リーディング「RE 古田新太×宮沢りえ」 感想2012/06/18 20:00

 作・演出の土田さん、「ボーイズタイム」の脚本された方ですね。
 古田さんの間髪いれずにメールを読み上げるタイミング、間によって笑いを起こせるあたり、さすがでした。この人の声は本当に聞き惚れてしまいます。
 最後は、悲しくて泣けた。1夜限りのプレミアライブ、放送に感謝でした。ほかの人のバージョンはまた別の日に。
【追記】
 宮沢ちゃんも良かった。他のVerを聴いて、やっぱりこの人が一番良かった。メールらしい抑制した部分があって、で、やっぱり声がいい。
 ほかの人のは、さわりを聴いたけど、みんな途中で聴くのを止めてしまった。話し方、間、声、やはり誰でもいいわけではないということだ。

@ぴあに土田さんのインタビューあり

<公演情報>
CBGK Premium Stage リーディングドラマ 『Re:』(アール・イー)
作・演出:土田英生
主題歌:瓜生明希葉
■公演日程
2012/3/20(火祝) 14:00/18:00 藤木直人 ×  ベッキー
3/22(木)  14:00/19:00 竹中直人 ×  中越典子
3/24(土)  18:00 古田新太 ×  宮沢りえ
3/25(日)  14:00/18:00 生瀬勝久 ×  仲間由紀恵

当代の人気“演技者”たちがそれぞれの個性を存分に注ぎ込む、新作リーディングドラマ『Re:』(アールイー)。

今年3月に「CBGKシブゲキ!! プレミアムステージ企画」第一弾として上演された『Re:』は、土田英生の書き下ろし新作で、1組の男女が10年間に渡り交わしたPCメールをリーディングするという、現代的なスタイルの朗読劇。

<あらすじ>
 物語は片山なつきという女性が、苦しい恋に悩む友人を助けようと交際相手の男性におせっかいメールを送ったことから始まる。受け取ったのは堂山参太郎。堂山は交際相手本人ではなく単なる彼の同僚だったのだが、なつきは勘違いプラス成りゆきから辛辣な文面を連続送信。「失礼な方ですね」と返信する堂山。やがてふたりは頻繁にメールを交わすようになり…。

 舞台上には椅子と小さなテーブルだけ。しかし、怒ったりふざけたり悲しんだり、俳優が様々な感情を声に乗せメールを読み合ううち、観客は次第に彼らが刻んだ時間、過ごした日々、育み合った愛情の確かさと暖かさを感じ取り、共有していく。


このステージに出演した8人から、以下のコメントが届いた。


藤木直人「距離感が変わったり、違う人にちょっと心が行ったりしつつもずっと繋がり続けたふたり。お客様も純愛として感動できるんじゃないでしょうか」

ベッキー「なつきは最後とかどんどん弱くなっていくし乙女になっていくから…可愛いなって。まっすぐな女性なんだろうなって思いました」

竹中直人「朗読劇だと自分なりの理想的な音があって、それを探りながら…でも、探り過ぎると今度はテンポが落ちるので、そこが難しかったかな」

中越典子「読みながら、竹中さんの顔を見たい、横を向いてみたい、お客さんと感情を共有したいと惑わされそうになったけど(笑)、楽しかったです」

宮沢りえ「堂山さんは魅力的。文書がやっぱり…キュンっと来るところ、ありましたね。女心がくすぐられるような。古田さんもセクシーですし」

古田新太「りえちゃんは声もチャーミング。4組やった中で僕らが一番エロかったんじゃないかなって思います。…ホントの意味でのエロ、エロス」

仲間由紀恵「ぶつかっていけば乗っていけちゃう素晴らしい本だったので、読んでいて自分でもドキッとしました。ストーリーに飲み込まれている感じ」

生瀬勝久「小屋があればできる作品だよね。僕はこの『Re:』をいろんなところで上演したいって思います。できればまた新作も書いていただきたいな」


 演者によってふたりの愛の在り方、見え方が変容するのも本作の大きな魅力。シンプルゆえにダイレクトに心に迫るラブストーリー。